『ペスト』と、現代を生きる私たち
カミュの『ペスト』は、アルジェリアの都市オランで起きた疫病の物語です。しかし、ただの伝染病小説ではありません。むしろこれは、「不条理な世界に、私たちはどう応答すべきか?」という深い哲学的問いへの返答です。
とはいえ、そんな大きな問いに尻込みせず、今日はこんなふうに読みたいと思います。
「ペストが流行っている時に、人は何をすればいいのか?」
カミュの答えは、意外なほどシンプルです。
登場人物の医師・リウーは、ペストという圧倒的な不条理に対して、声高に叫んだり、宗教にすがったり、英雄になろうとしたりはしません。
彼がしたのは、ただ目の前の患者を診ること。黙々と、丁寧に。
この姿勢は、カミュが提唱した「反抗の哲学」に通じます。
世界が意味を与えてくれないなら、自分が意味をつくるしかない。
不条理のなかでも、「やるべきことをやる」という態度が、人間としての尊厳を保つ手段なのだと。
たとえば、私たちの「小さなペスト」
現代を生きる私たちにも、形は違えど「ペスト」はやってきます。
思い通りにいかない人間関係、理不尽な仕事、先の見えない不安。
それはカミュの言う「不条理」に他なりません。
でも、『ペスト』を読んでいると、こんな気持ちになれます。
「完璧じゃなくていい。
大きな正義を掲げなくていい。
ただ、いま目の前の“誰か”のために動くこと。
それが、私の反抗であり、希望なんだ。」
軽妙にまとめるなら
カミュは、戦わないヒーローを描きました。
リウーはただ、静かに診療所に向かうだけ。
だけどそれが、とても格好いい。
だから今日も私は、
コーヒーを飲んで、メールを一通書き、
そしてこのエッセイを書いています。
世界はきっと不条理だけど、
私には「やること」がある。
そしてそれが、私なりの「ペストへの抵抗」なのかもしれません。
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