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見えないものと暮らすということ
――村上春樹『騎士団長殺し』を読んで思ったこと
『騎士団長殺し』を読んだとき、私はふと、こんなことを感じました。
――目に見えないものと、私たちはどうやって暮らしているんだろう? と。
物語のなかに登場する「騎士団長」や「イデア」は、実体があるようでなくて、でも確かにそこにいる存在。奇妙だけど、どこか懐かしい。
それを読んでいるうちに、私もふだんの生活の中で、気づかないうちにそういう“見えない存在”と一緒に生きているのかもしれないな、と思いました。
たとえば、理由はよくわからないけれど、なんとなく不安になる夜。
あるいは、昔の音楽を聴いて、涙が出そうになるとき。
そんなとき、私の中の“騎士団長”が何かを伝えようとしてくれているのかもしれない。
見えないけれど、確かにあるもの。
そして、それにちゃんと耳を澄ませることが、大人になるってことなのかもしれないなって。
この本を読んでから、私は少しだけ、曖昧なものや、はっきり説明できない感情に、優しくなれた気がします。
目に見えることばかりを追いかける日々の中で、見えないものにも、ちゃんと居場所をあげられたら――それって案外、すごく大切なことかもしれないですね。
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